異端者の悲しみ

耽溺日記

数年前の中国旅行記①(旧ブログ転載編集記事)

今日は夕方から雨か、外に出るのが怠いなぁ。上海・外灘のユースホステルのベッドで近くの時計台が15分毎に鳴らす“東方紅”の鐘の音を聞きながら、そんなことを考えていた。前日に南京東路にあるブラジル料理屋で食べたバーベキューが胃もたれしている。あれほどに楽しみにしていた旅も終わりかけになると、疲れも相まって気怠いものだ。もうあと何回か“東方紅”を聞いたら、宿のすぐ近くの煙草屋に中南海を買いに行こう。そう思いながらもう一度寝返りを打った。。。

私は中国旅行が好きだ。というか、大学入学以来、一人で訪ねた都市の数の内、半分くらいが中華圏の都市だ。北からハルビン長春、北京、南京、上海、基隆、台北、広州、深セン、香港、澳門twitter等で見かける中国好き界隈の人達に比べるとまだまだ有名都市しか行っていない私であるが、大学のニ外ですらない中国語の授業で、これらの都市に行った事があると言うと老師に驚いてもらえる。それぐらいのライトな中国旅好きだ。

大学生になってからというものの、休みになる度に中国へ行っていた様な気がする。今年は一度も中国へ行ける機会がなかったのは寂しいことであるが。

これから数回のブログ記事では去年の9月に神戸から上海まで“新鑑真”というフェリーで行って、上海から南京、南京から北京、北京から上海に戻り上海から神戸までフェリーで戻った旅の話を覚えている範囲で記そうかと思う。あいにく写真はいくつかのスマホに分散しているので見つけ次第、記事を編集して追加しようかと思う。

なぜこの旅をしようと思ったか。この旅の自分の中での主目的はフェリーで中国に渡るということだった。明治以来、アジア中、いや、ヨーロッパや南米にも航路があった神戸港から今も出ている唯一の国際定期フェリー。飛行機とも鉄道とも違う時間の流れ方で異国を旅するのは私の長い間の憧れだった。

上海⇔神戸のフェリーは学割で27000円ほどである。2000年代まではこれが一番安い出国方法だったそうだが、今では春秋航空はおろか東方航空のキャンペーン価格よりも高い。それでも船旅の魅力には負けてしまった。チケットは割と簡単に買えて、旅行代理店や大学生協でも買えてしまう。

さて、神戸の港に早めに着き手続きを済ませる。噂には聞いていたが本当にお客が少ない。大きなフェリーなのに待合の客は30人程だ。出国手続きもおおらかかつにこやかなもので、国際空港のある種の緊張感とは違った和やかな空気だ。

船内の部屋は十二人の雑魚寝部屋だが、今日の乗客は私と華人のおじさんの二人。おじさんは東京で仕事をしているそうだが、極力飛行機には乗りたくないらしくいつも上海へはこの船で行くそうだ。フェリーのポイントカードを見せてくれる。おじさんと食堂に行く。メニューは豊富だし日本の安めの飯屋ぐらいの適正価格だ。瀬戸内海の島々、行き交う船を見ながらいただきます。食後は煙草。おじさんに中国の煙草を分けてもらいながらあれこれ話す。そうそう、私はこういう旅がしたかったんだ。

夜の8時からはバーが開きカラオケが歌える。飲物の値段だけで10時過ぎまで歌えてお得だ。中国と日本のカラオケ機材どちらもあるので、テレサ・テンとか山口百恵とか中国の80年代の流行歌とかを歌う。

船は丸2日かけて上海・外灘の国際フェリーターミナルに着くのだが、最後の朝の船からの上海の景色は格別だ。

到着ロビー、ここも空港と比べるとどこか穏やかな雰囲気だ。おじさんに再見を告げて、外灘のユースホステルまで歩いてみることにした。中国の街を歩く時のこの高揚感で徐々に胸が満たされていくような感覚は、何度味わってもやめられない。

途中の中国銀行で両替。市中の中国銀行は手数料ゼロで両替をしてくれるのだ。銀行の前で怪しい老人に英語で声を掛けられる。“闇両替か?魔都上海だな~”と思いつつ話していると銀行内のどこに行くと外貨の両替をしてくれるか、今日のレートは幾らかを教えてくれただけの親切なおじいさんだった。両替が終わったあと銀行を出ると同じおじいさんが“良い旅を!”と日本語で声を掛けてくれた。上海はつくづく不思議な街だな。そんなことを聞きながら東方紅の鐘を聴きつつ福州路の宿へと足を運んだ。

今日のところはこの辺で筆を置こう。次回はユースホステルに荷物を置いた後のちょっとした怖い話。どうぞお楽しみに。