異端者の悲しみ

耽溺日記

酔って候

 梅田の駅の周りは本当に喫煙所が少ない。阪急電車の駅内のそれもコロナ禍で封鎖されてしまってから随分と経つ。癪なことだ。パチンコ店の喫煙所に入って一服した。土曜の昼前、高知に向かう高速バスを待っていた。しばらくすると「色男」(金沢の旅について記した長編ブログ参照)が現れた。バス待合の売店には、ろくなものが売ってなかったが、色男はおにぎりとお茶を買っていた。

 バスが来た。高知までは5時間程だろうか。バスに乗り慣れた、わたしにとっても少し億劫になる距離だ。乗り込むと意外と乗客は少なかったが、途中の新大阪や宝塚で新たに何人かを拾って走り続けた。どんよりと曇った空からは、時折、雨粒が落ちた。

 バスは淡路島の南の方にあるパーキング・エリアに小休止を取った。少し遠くに見える本線との合流に「四国」との文字が書かれていることに、また旅が始まってしまったかと呆れた様な感情を抱いた。バスが徳島に入る頃には晴れ間が見えてきた。まだ、先は長い。四国といえば山ばかりだから、余計に長く感じることだろう。晴れと曇り、そして雨の中を行ったり来たりしながらバスは進んだ。二度目の小休止の後はひたすら山の中のトンネルを出たり入ったりを繰り返した。


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 「南国」や「高知」を示す路上の看板が二ケタキロになった頃、晴れ間が広がった。この分では、この旅は安心だ。高知のインターチェンジを降りて、間もなく高知駅に着いた。待ち構えていたのは、この街で「稼業」をする男。シャンパン・ゴールドのセダンの中はひたすらに煙草臭かったし、トランクには釣り竿が転がっていた。稼いでいるとはいうが、本当に仕事をしているのだろうか?

 もうひとりの男を拾う為に空港へ向かうことにした。この街の道はどうも走りやすそうだが、とにかく交通量が多い。中心部を抜けると車も少なくなったが、男はセダンで飛ばしに飛ばしたから気が気でなかった。

 車の中で煙草を吸い、窓を開け、「寒い!」と言って窓を閉めることを何度か繰り返すうちに空港に着いた。ギャング映画みたいに到着ターミナルに乗り付けて前後ドアの窓を開けて、男を探した。男が来ると、彼が株主優待を使って飛行機に乗ってきたことを何度か、からかい、再び高知市街へと戻った。煙草を吸い、窓を開け、寒いと窓を閉め、そして大きな大きな音で昭和歌謡を流しながら…

〜つづく〜