異端者の悲しみ

耽溺日記

𝐒𝐇𝐀𝐍𝐆𝐇𝐀𝐈倦怠記

 以前の更新からもう九ヶ月も経ってしまったが、数年前の旅行の話をもう少ししてみようと思う。

 飯を求めて上海の回族街に辿り着いた私は、一軒のレストランに入った。間口は狭いものの奥に長く、入口には回族街特有な大きくて丸いパンが山積みにされていた。客の殆どは回族ウイグル人と思われる家族連れだった。一人で来ているのはこの私ぐらいのものだった。中国をひとり旅する時に困るのは食事だ。味や値段の話ではなく大皿料理が基本なのでひとりで食堂へ行っても持て余してしまう。いきおい、麺を食べたり、大皿料理を一皿だけ黙々と食べることになる。回族街なら羊肉串などがあって量も調整しやすかろう、そう思ってここへ来たのかもしれない。

 隣の親父が飲んでいたドライフルーツなどが入った茶が美味そうに見えて仕方なかったので、それを頼んでみた。羊肉串と丸くて大きなパンも頼んだ。上海へ来たもののひとりだと飯の種類に欠けるのは少し残念なことだが仕方がない。味は申し分なく満足したまま宿へ帰った。

 翌朝、来たる南京行きのチケットを発行しに上海駅へと向かった。外灘や浦東と比べると、どこかさみしい上海駅付近。思っていたよりも早くチケットの発行が終わってしまったので、駅の周りを散策したが、特に見るものも無かった。上海に倦みつつある自分を見つけながら地下鉄に乗った。地下鉄を降りて煙草を買った。中南海の15mg。何故か中国ではタールの低い銘柄の方が値段が高い。タールの高い煙草を愛煙する私にとってはありがたい話だが。

 宿へ戻り、翌日の移動に備えて荷物を纏めて、その後は外灘と浦東の夜景を観に行った。宿は外灘にほど近く抜群のロケーションであるし、旅はこれからというのに、深夜特急第三巻の沢木耕太郎並みに私は倦怠感に苛まれていた。南京の街はこの気分を変えてくれるだろうか?それともこのままだろうか。